不妊治療で妊娠に至った単胎妊娠の親において、妊娠期間中から産褥期に渡って不安レベルの上昇が認められた
不妊治療で妊娠に至った単胎妊娠の親において、周産期に不安のレベルの上昇が認められました。一方、不妊治療で双胎妊娠となった親においては、精神病理学的な症状のレベルが上昇し、妊娠期間中および産褥期にも継続し上昇する傾向が認められました。
Parents‘ anxiety and depression symptoms after successful infertility treatment and spontaneous conception:does singleton/twin pregnancy matter?
I.Tendais and B.Figueiredo
Hum Reprod.2016 Oct;31(10):2303-2312
【文献番号】r10700 (一般不妊関連事項)
従来行われた大部分の研究では、不妊治療の成功は妊娠中および産褥期における心理的なウェルビーイングの低下とは相関しないが、妊娠に伴う不安、自尊感情の低下および自己効力化の低下などのレベルが上昇するとするいくつかの根拠が示されている。双胎妊娠の親は分娩後に不安や抑うつのレベルは上昇するとも報告されている。
そこで、妊娠成立の様式、すなわち自然妊娠か、不妊治療後の妊娠か、妊娠のタイプ、すなわち単胎妊娠か、双胎妊娠か、さらに親の性が妊娠中および産褥期における不安や抑うつのレベルに影響を与えるか否か検討した。妊娠の各三半期、出産後および分娩3か月後において、267組のカップル、534名を対象に前方視的縦断面的研究を行った。
不妊治療で妊娠に至ったものは36組で、19組は双胎妊娠、17組は単胎妊娠であった。自然妊娠に至った231組で、28組が双胎妊娠、203組が単胎妊娠であった。これらのカップルは4つの公的病院で調査に参加した。自己報告による不安や抑うつ症状を調べたところ、不妊治療で妊娠に至った親は自然妊娠の親よりも妊娠のタイプにかかわらず、出産後に不安のレベルに有意な上昇が認められた。不妊治療を受け双胎妊娠に至った親においては、不妊治療で単胎妊娠に至ったものよりも妊娠中期において不安のレベルは上昇し、さらに、分娩後3か月の時点において不安のレベルと抑うつのレベルの上昇が認められた。
不妊治療で妊娠に至った母親において双胎妊娠であったものでは単胎妊娠であったものより分娩後に抑うつをみる割合は高かった。妊娠成立の様式、妊娠のタイプおよび親の性別にみた場合にも差異が認められた。妊娠期間中、不妊治療で双胎妊娠となった親は抑うつスコアに有意な変化は認められなかったが、その他のグループにおいて抑うつのスコアはどの時点においても有意な低下が認められた。
不妊治療で妊娠に至った親は妊娠から産褥期にかけて不安のスコアの上昇が認められたが、自然妊娠の親では不安のスコアに変化は認められなかった。また、不妊治療を受け妊娠に至った女性は抑うつのスコアに上昇が認められたが、自然妊娠で親になった女性の抑うつのスコアは低下した。
産褥期において不妊治療で親になったものと自然妊娠で親になったものにおいて双胎であっても不安のスコアに変化は認められなかった。一方、不妊治療後の単胎妊娠の親と自然妊娠で単胎となった親においては不安のスコアは低下した。