全胚凍結戦略がARTにもたらすもの〜その可能性について
最初のメタアナリシスで凍結融解胚移植によって、着床率、妊娠率および継続妊娠率に有意な上昇が認められたと報告された
その後、凍結融解胚移植によって生児出産率を高めることができると発表された。新鮮胚移植と凍結融解胚移植を比較した最初のメタアナリシスにおいて凍結融解胚移植を試みることによって、着床率、妊娠率および継続妊娠率に有意な上昇が認められたと報告された。このような結果はおそらく子宮内膜と胚の同調性によって説明することができる。分割期胚移植胚盤胞移植のいずれにおいても凍結融解胚移植によって、子宮外妊娠の割合を低下させることもできるという結果も報告された。
凍結融解胚移植で出産した児においては新鮮胚移植で出産した児よりも周産期の臨床結果が改善することが確認された
以前の研究においてARTで出産した児においては、早産、低出生体重児出産、SGAの児の出産、周産期死亡などの割合が自然妊娠よりも上昇すると報告されている。しかし、凍結融解胚移植で出産した児においては、新鮮胚移植で出産した児よりも周産期の臨床結果が改善することが確認された。特に、凍結融解胚移植で出産した単胎児においては低出生体重児出産および早産の割合は自然妊娠と同様であるという結果が報告された。このような結果は凍結融解胚移植の際の子宮内環境が子宮内膜の受容能にポジティブな影響を与えるばかりでなく、胎盤形成や胎児発育にも良い影響を与えるのではないかと考えられている。全胚凍結戦略に関する弱点に関しても検討されている。
今までの全胚凍結戦略に関する研究は症例数が少なく研究のプロトコールにも多様性が認められている
今までの全胚凍結戦略に関する研究では症例数が少なく研究のプロトコールも多様性があり主に過剰反応のリスクのある患者に限られている研究が多い。現在、全胚凍結戦略が実際にどの程度有効であるかということを確認するための無作為対照試験が行われている。GnRH agonist triggerを試みたとしてもOHSSが必ずしも回避できるわけではなく、GnRH agonist triggerで特にルテアールサポートを試みない症例においてもOHSSの発症した例が報告されている。最近、vitrification、融解胚の移植によって生児出産率が上昇し、新鮮胚移植のレベルに達したという報告もある。