IVF患者の膣微生物叢を調べるqPCRテストは、異常膣微生物叢の有無を調べて臨床的妊娠を予測するツールとなる可能性を示した論文

IVF患者の膣微生物叢(microbiota)を調べるqPCRテストは、異常膣微生物叢の有無を調べIVFの臨床的妊娠を予測する確かなツールとなるものと思われます。

Abnormal vaginal microbiota may be associated with poor reprouctive outcomes:a prospective study in IVF patients
T.Haahr,J.S.Jensen,L.Thomsen,L.Duus,K.Rygaard,and P.Humaidan
Hum Reprod.2016 Apr;31(4):795-803

細菌性膣症は、不妊患者において約19%に認められる一般的な性器にかかわる異常である。
細菌性膣症は乳酸桿菌を主体とした膣微生物叢から、より多様なgardnerella菌や膣atopobium菌のような嫌気性菌が主体となった細菌叢への移行を伴って、しばしば亜臨床的疾患として認められる。

不妊女性を対象とした膣細菌症にかかわる研究は少なく、一部の研究においては膣細菌症は妊孕性にネガティブな影響を及ぼすと報告している。
そこで、IVFの成功率を予測する上でqPCRを用いた膣細菌症の診断とヌーゲントスコアリングを用いた膣微生物叢の異常の診断とを比較するために、130名の不妊女性を対象とし調査を行った。

調査期間は、2014年4月から2014年12月までに行われたIVFを受けた患者からスワップを採取し、ヌーゲントクライテリアに従ってグラム染色したスライドを調べた。また、qPCRを用いて乳酸桿菌、膣gardnerella菌および膣atopobium菌を調べた。閾値のレベルはROCカーブによる分析によって判定した。

ヌーゲントクライテリアで判定した膣細菌症の発現頻度は21%(27/130)であった。一方、qPCRで調べた異常膣微生物叢が認められたものの割合は28%(36/130)で膣ガードネレラ菌や膣atopobium菌の濃度の上昇が認められた。
qPCRを用いた診断法は、ヌーゲントクライテリアで診断された膣細菌症に対する感度は93%、特異度は93%という結果であった。qPCRで検査を受けた84名の患者がIVFを終えたが全妊娠率は35%(29/84)という結果であったが、興味深いことにqPCRで異常微生物叢と診断されたものにおいては9%(2/22)のみが臨床的妊娠に至った。