不妊リスク

子宮外妊娠のオッズはたとえ非良好胚であっても2個の胚移植を試みることによって上昇するという結果が得られた。

Transfer of two non-top quality embryos increases the risk of ectopic pregnancy after fresh and frozen-thawedembryo transfer

胚の質が子宮外妊娠のリスクと相関するか否か検討した。自己の新鮮卵子を用いた10,255周期と凍結融解胚移植を試みた6,636周期を対象に2000~2017年において認められた16,891例の臨床的妊娠を対象に後方視的コホート研究を行った。すべての症例において形態的に最良好胚と診断された胚を最大2個を移植した。

異所性妊娠は子宮外妊娠の範疇に含めた。105単一最良好胚の移植は 6,634周期(39.3%)に、また、単一非最良好胚の移植は 4,206周期(24.9%)に行われた。2個胚移植を試みた例において最良好胚の移植ができなかったものは3,721周期(22.0%)、1個の最良好胚の移植を試みたものは 1,485周期(8.8%)、また、2個の最良好胚の移植が試みられたものは 845周期(5.0%)であった。

ロジステック回帰分析を用いて女性の年齢、移植胚数、胚の質、新鮮胚移植、凍結融解胚移植、卵管性不妊などが子宮外妊娠のリスクにどのような影響をもたらすかを調査した。

子宮外妊娠は 384周期(2.3%)に発生した。子宮外妊娠の発生率は新鮮胚移植においては 2.2%、凍結融解胚移植においては 2.4%で統計的有意差は認められなかった。また、子宮外妊娠の発生率は最良好胚のみを移植した群おいては 1.9%と非最良好胚を移植した群における 2.8%を有意に下回った。

卵管性不妊は子宮外妊娠例において19.5%と子宮内妊娠群における10.2%を有意に上回った。

ロジステック回帰分析を用いて新鮮胚移植後の子宮外妊娠のオッズを調べたところ、凍結融解胚移植と新鮮胚移植で差は認められず、そのオッズ比は 1.06という結果であった。2個胚移植においては 1個胚移植よりも子宮外妊娠のリスクは有意に高く、そのオッズ比は1.45であった。

卵管性不妊の場合は子宮外妊娠のリスクは上昇しそのオッズ比は 2.06であった。1個の非最良好胚の移植と比較し 2個の非最良好胚を移植した場合の子宮外妊娠のオッズ比は 1.49と有意な上昇が認められたが、1個の最良好胚あるいは 2個の最良好胚を移植した場合の子宮外妊娠のオッズ比はそれぞれ0.79と1.31であったが統計的有意差は得られなかった。

女性の年齢は子宮外妊娠と有意な相関は認められなかった。

S. Anzhel 1,2, S. Mäkinen 3, H. Tinkanen 4, T. Mikkilä 4, A. Haltia 5, A. Perheentupa 3, C. Tomás 6, H. Martikainen 7, A.
Tiitinen 1, J. Tapanainen 1, Z. Veleva 1.
1University of Helsinki and Helsinki University Central Hospital, Obstetrics and Gynecology, Helsinki, Finland.
2University of Varna, Department of Obstetrics and Gynecology, Varna, Bulgaria.
3University of Turku, Obstetrics and Gynecology, Turku, Finland.
4University of Tampere, Obstetrics and Gynecology, Tampere, Finland.
5Felicitas Mehiläinen Turku, Turku infertility clinic, Turku, Finland.
6Ovumia and Fertinova Tampere Infertility Clinics, Infertility Clinic, Tampere, Finland.
7University of Oulu and Oulu University Hospital, Obstetrics and Gynecology, Oulu, Finland.

関連記事

  1. 不妊リスク

    子宮内膜症の思春期の少女へのサプリメント投与:二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験

    外科的に子宮内膜症と確認された思春期女性および若年女性においてビタミン…

  2. 副作用

    ヒトの胎児の精巣や卵巣がアセトアミノフェンやイブプロフェンに被曝した場合について示した論文

    ヒトの胎児の精巣や卵巣がアセトアミノフェンやイブプロフェンに被曝した場…

  3. 不妊リスク

    ガン罹患後の不妊リスクについて

    一定の非婦人科の癌に罹患した思春期/若年女性の生存者はその後に不妊と…

  4. ART

    IVFに対する子宮筋腫の影響:系統的レビューとメタ分析

    子宮腔に影響を与えない筋層内筋腫が存在している場合、漿膜下筋腫の有無に…

  5. 不妊リスク

    ESHREガイドラインにおけるPOIの診断と治療について④

    POIと診断された女性における泌尿生殖系の問題に対しどのような治療法が…

  6. 不妊リスク

    子宮外妊娠における卵管切除術はその後の妊孕性にポジティブな影響はもたらさないという結果が得られた論文…

    ごくわずかな有益性は除外することはできないが、子宮外妊娠における卵管切…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

サイト情報をキャッチ

Push7でプッシュ通知を受け取る:



FeedlyでRSS購読をする:



>> プッシュ通知やRSSについてはこちらをご覧下さい

最近の記事

記事ランキング

アーカイブ

最近チェックした記事

    最近のコメント

      1. 不妊治療

        ESHREガイドラインにおけるPOIの診断と治療について③
      2. ART

        IVFに対する子宮筋腫の影響:系統的レビューとメタ分析
      3. 未分類

        卵母細胞成熟の最終日の血清プロゲステロンレベルの臨床的に有意な日内変動:反復測定…
      4. ART

        全胚凍結戦略がARTにもたらすもの〜広がりつつある全胚凍結戦略
      5. ART

        IUIの緩慢注入法について
      PAGE TOP