ヒトの胎児の精巣や卵巣がアセトアミノフェンやイブプロフェンに被曝した場合、胚細胞の数は28~49%の有意な減少が認められました。一方、齧歯類を用いた研究においてエピジェネシスに関わる調節因子の遺伝子の発現に変化が起こることが確認されました。
O-169 Exposure to acetaminophen and ibuprofen affects fetal germ cell development in both sexes in rodent and human
Hurtado-Gonzalez1, J. MacDonald1, K. Kilcoyne1, S. van den Driesche1, A. Jorgensen2, R. Anderson1, R. Sharpe1, R.
Mitchell1.
1University of Edinburgh, MRC Centre for Reproductive Health, Edinburgh, United Kingdom.
2Copenhagen University Hospital Rigshospitalet, Department of Growth & Reproduction, Copenhagen, Denmark.
女性の大部分は妊娠中に少なくとも1度は鎮痛剤であるアセトアミノフェンやイブプロフェンを服用している。一部の疫学研究においては妊娠中の鎮痛剤の使用と児における停留精巣との関係が指摘されているが、しかし、研究者間で必ずしも意見の一致はみていない。
ヒトの精巣組織を異種移植した実験モデルにおいて長期的なアセトアミノフェンの被曝は血中テストステロンレベルの低下をもたらすと報告されている。
一方、齧歯類を用いた研究ではアセトアミノフェン被曝後において胚細胞の影響の可能性が示唆されている。しかし、ヒトの胚細胞において鎮痛剤の被曝がどのようなメカニズムで影響を及ぼすかということに関してはよくわかっていない。
そこで、ヒトや齧歯類の胎児の精巣や卵巣に鎮痛剤の使用量がどのような影響を及ぼすかをin vitro、invivoおよび異種移植のアプローチを用いて調べた。
妊娠第1三半期の胎児精巣や卵巣を培養しアセトアミノフェンとイブプロフェンに7日間にわたって被曝させた。また、妊娠第2三半期の胎児精巣を免疫不全マウスに異種移植しアセトアミノフェンを1日あるいは7日間、また、イブプロフェンを7日間にわたって被曝させた。
摘出した精巣組織を用いてセルトリセルのマーカーである SOX9、生殖母細胞のマーカーであるTFAP2C(gonocytes)および前精祖細胞のマーカーであるMAGEA4を指標に免疫組織学的検査を行った。
また、ヒトとラットのepigenetic regulatorの発現に関しても調査した。さらに、胚細胞の多能性のマーカーを使用し遺伝子の状態を調べた。
妊娠第1三半期のヒトの胎児の精巣はアセトアミノフェンに被曝することによって、生殖母細胞のマーカーの陽性細胞の数に影響が認められ、アセトアミノフェンに被曝した場合は28%、イブプロフェンに被曝した場合は22%の有意な減少が認められた。
また、アセトアミノフェンに被曝した卵巣においては43%、イブプロフェンに被曝した場合には49%の減少が認められた。また、妊娠第2三半期の胎児の精巣を異種移植したところ生殖母細胞の数はアセトアミノフェンの1日被曝で17%、7日間被曝で30%の減少をみた。
NT2陽性細胞の数もアセトアミノフェン、イブプロフェン、プロスタグランジンアンタゴニストなどの被曝で減少が認められたがプロスタグランジンアゴニストによってアセトアミノフェンが関わるNT2細胞の減少を阻止することができた。
DNAやヒストンの調節に関わる遺伝子、胚細胞の多能性に関わる遺伝子の発現も鎮痛剤の投与で変化が認められた。これらの結果は限界もあり、鎮痛剤はヒトやラットの精巣や卵巣に影響を与えることが明らかとなった。
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