<中心的な質問と勧告>
本疾患を何と呼ぶのか
1942年に初めて原発性卵巣不全(primary ovarian insufficiency)について報告された。それ以来、本疾患に対しいろいろ名前や定義が使用されてきた。研究や臨床の目的においては本症をPOI(primary ovarian insufficiency、POI)と呼ぶべきである。
どのようにPOIを定義するか
POIは40歳未満における卵巣機能の欠如として定義される臨床的症候群(clinicalsyndrome)である。POIはゴナドトロピンの上昇とエストロゲンの低下を伴った、無月経や希発月経などの月経異常を特徴とする。
POIは一般人にどの程度、発現するか
POIの発現率は1%以下である。人種などを含むいろいろな要因が、その発現頻度に影響を与える可能性がある。長期的な健康上の問題も考慮し、POIの発現頻度を減少させるよう努力する必要がある。変更可能な因子として、婦人科手術、生活様式(特に喫煙)、悪性疾患や慢性疾患の治療のレジメンの変更などについて考えてみる必要がある。
POIと診断するためにはどのような検査が必要か
POIの診断には月経異常と生化学的な検査の結果をもとに診断を下す必要がある。POIの正確な診断の精度は明らかではないが、ガイドラインでは、1)4か月以上の希発月経あるいは無月経、2)FSHレベルが25IU/1超であることを4週間超の間隔で確認することが勧められている。
POIの原因は何か、またどのように検査すべきか
・非医原性POIの患者には、染色体分析を行うべきである。Y染色体が確認されたすべての女性においては、性腺摘出を行うべきである。
・POIの女性においては、Fragile X premutation testを行うべきである。検査を行う前に、Fragile X premutationの意味について話し合っておく必要がある。
・特別な変異を示唆する問題を伴わない場合には、常染色体遺伝子検査は検査の対象とはならない。
・内科的または外科的治療の結果、POIに至る可能性のある場合は、治療の同意を得る過程において、女性とPOIについて話し合っておく必要がある。
・喫煙とPOIとの間の因果関係は確認されていないが、喫煙は早発閉経にかかわっていることが知られている。したがって、POIのリスクのある女性には禁煙が勧められるべきである。
自己抗体検査はどの程度の頻度で実施すべきか
特に徴候や症状などが認められない場合には、21-hydroxylase抗体(21OH-Ab)、副腎皮質抗体(adrenocortical antibodies、ACA)および甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(anti-Thyroid Peroxidase Antibody、TPO-Ab)が陰性のPOIの女性において再度検査する必要はない。
POIを有する女性の親族に対してどのような対応が必要か
・POIのリスクに不安を持っているPOIの女性の親族には、POIに発展する可能性のある女性を特定する検査は存在しないことを伝える必要がある。
・POIを予防する方法も存在しないが、妊孕性温存法は有効な選択肢となる。
POIに伴う合併症に対する対応は何か
POIを有する女性は、禁煙、規則的な運動、体重管理などによって心血管疾患のリスク因子を抑制することが勧められる。
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