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IUIの緩慢注入法について

35歳未満の女性においては、4時間にわたって子宮腔に低濃度の精子を注入する緩慢注入法は標準的なIUIよりも妊娠率は向上する。

実際のIUIの方法に関してはごく少数の論文しか報告されておらず、またその方法に関して疑問ももたれている。IUIの変法として緩慢放出人工授精(slow-release insemination、SRI)があり、その方法は1992年に初めて報告された方法である。

著者らは持続的に低濃度の精子を注入することによって受精期間を延長しそれによって卵管内へ生理的な精子の移送を可能にすると述べている。

また、著者らは2件の予備的な無作為対照試験を行っており、その結果、SRIは一般的なIUIよりも有意に優っているという結果を報告している。そこで、SRIが標準的なIUIが可能な不妊女性における妊娠率にどのような影響を与えるか調査した。

多施設が参加し、無作為化対照交差試験を実施した。2012~ 2017年において82名の患者を無作為に2群に分けた。コンピューターを利用した無作為化を試みsIUI群とSRI群に分けた。

初回の治療が不成功に終わった場合には2度目の人工授精の際には他の方法を用いた。患者数はSRIによって相対リスクが2.0と想定し決定した。避妊を試みないで6か月以上不妊であった原発性および続発性不妊のもの、卵管性不妊、排卵障害による不妊、子宮内膜症、運動精子数が1,000万超の男性不妊、原因不明不妊を対象とした。女性には標準的なIUIかSRIを試みた。SRIにはEVIE deviceを用い4時間にわたって子宮内に精子を注入した。

SRIを用いた場合の全妊娠率は13.2%、IUIを用いた場合の総妊娠率は10.0%でその相対リスクは1.32という結果であった。しかしながら、この差異には統計的有意差は得られなかった。

SRIを試みた35歳未満のすべての女性における妊娠に対する相対リスクは2.33でSRIを用いた場合の妊娠率は17%、IUIを用いた場合の妊娠率は7%にとどまった。この差異は統計的有意差が認められた。

IUI群とSRI群において35歳未満の患者の女性および男性に関する背景に差異は認められなかった。妊娠率はクロミフェン周期、rFSHあるいはプロゲステロンを用いたとしてもいずれの群においても差異は認められなかった。

また、35歳未満の群においても全体の患者群においても差異は認められなかった。しかし、クロミフェンを用いSRIを試みた35歳未満の女性における妊娠率は24.1%と例外的に高い値を示した。SRIあるいはIUIで妊娠に至った女性において薬剤の使用に差異は認められなかった。

O-118 The effect of intra-uterine slow-release insemination (SRI) on the pregnancy rate in women designated for standard

intra-uterine insemination (IUI) – A multicentre randomized, controlled trial

Biography

Dr Julian Marschalek is the head of the Oncofertility Unit and Senior Physician and Deputy Head of the IVF Outpatient Clinic in

the Department of Gynecological Endocrinology and Reproductive Medicine at the Medical University of Vienna, Austria. He

combines his clinical work with teaching at the Medical University of Vienna.

M.Franz 1, C. Egarter 2, J. Campell 3, E. Vyiska-Binsdorfer 2, J. Ott 2, J. Marschalek 2.

1Gyn-Bogenhausen.de, Reproductive Medicine, Munich, Germany.

2Medical University of Vienna, Dept. for Gynecology and Obstetrics, Vienna, Austria.

3University of Northampton, Faculty of Health and Society-, Northampton, United Kingdom.

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