ART

IVFに用いられる胚培養液が、治療結果と新生児の出生体重に影響を及ぼすことを示した論文

IVFに用いられる胚培養液は、治療結果と新生児の出生体重に影響を及ぼすことが明らかになりました。

influence of embryo culture medium(G5 and HTF)on pregnancy and perinatal outcome after IVF:a multicecter RCT
Sander H.M.Kleijkers,Elemi Mantikou,Els Slappendel,Dimitri Consten,Jannie van Echten-Arends,Alex M.Wetzels,Madelon van Wely,Luc J.M.Smits,Aafke P.A.van Montfoort,Sjoerd Repping,John C.M.Dumoulin,and Sebastiaan Mastenbroek
Hum Reprod.2016 Oct;31(10):2219-2230

IVF/ICSIの際に用いられる培養液には大きな差異が認められる。どのような培養液が臨床結果からみて最善であるかという点についてはよくわかっていない。胚培養に用いられる培養液が出生体重に影響を与えることが知られているが、大規模な無作為対照試験で調べられているわけではない。そこで、胚培養液がIVFにおける妊娠にどのような影響を及ぼすか、また周産期における臨床結果にどのような影響を及ぼすか検討した。

IVFにおいてHTFとG5を比較するために多施設が参加した二重盲検無作為対照試験を実施した。2010~2012年においてHTF群419組、G5群417組を含む836組を対象に調査を行なった。無作為にグループ化し、1年以内にカップルが受けたすべての治療周期に同じ培養液を使用した。一次評価項目は生児出産率とした。オランダにおいて6か所の医療センターの1つにおいてIVFあるいはICSIによる治療を予定したカップルを対象とした。

生児出産率はG5群においてHTF群よりも高い値を示したが統計的有意差を得るには至らず、それぞれ44.1%と37.9%、相対リスクは1.2という結果であった。周期当たりの利用された胚の数はそれぞれ2.8個と2.3個で前者において有意に高く、新鮮胚移植後の着床率はそれぞれ20.2%と15.3%でG5群においてHTF群よりも有意に高い値を示した。さらに、臨床的妊娠率はそれぞれ47.7%と40.1%で、その相対リスクは1.2とG5群においてはHTF群よりも有意に高い値を示した。

今回の臨床試験において出産した383名の生児において380名の児の出生体重のデータが得られた。単胎児は300名でG5群が163名、HTF群が137名、双胎時は80名でG5群が38名、HTF群が42名であった。

出生体重はG5群においてはHTF群より有意に低く、その平均の差異は158gと統計的有意差が認められた。単胎児の早産率はG5群においては8.6%(14/163)とHTF群における2.2%(3/137)を有意に上回った。分娩週数および性で補正した単胎児の出生体重はG5群においてはHTF群よりも有意に低い値を示した。

関連記事

  1. ART

    Day5対Day6の新鮮および凍結胚盤胞移植サイクルの結果:系統的レビューとメタ分析

    day5胚盤胞移植を試みることによってday6胚盤胞移植よりも新鮮胚…

  2. ART

    トリガーの日における血中プロゲステロンレベルによる継続妊娠率の変化について

    トリガーの日における血中プロゲステロンレベルが 1.14ng/mL超の…

  3. ART

    世界におけるARTの実施状態とその結果について調査した論文

    世界的にみてARTの実施状況を調べたところ、その利用頻度と有用性は国に…

  4. ART

    全胚凍結戦略がARTにもたらすもの〜有用性と適正な評価の必要性

    卵子や胚のvitrificationを試みることによって黄体機能不全の…

  5. ART

    IVF患者の最適な刺激プロトコルを選択するための人工知能ベースのアルゴリズムの開発と検証

    AIを利用した予測モデルを作成したところ初回のIVFを受けた患者におい…

  6. ART

    胚の着床には子宮内膜と胚の同調が必要であることを示した論文

    生存能力の高い胚であっても受容能のない子宮内膜に移植された場合には不成…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

サイト情報をキャッチ

Push7でプッシュ通知を受け取る:



FeedlyでRSS購読をする:



>> プッシュ通知やRSSについてはこちらをご覧下さい

最近の記事

記事ランキング

アーカイブ

最近チェックした記事

    最近のコメント

      1. 多胎妊娠

        医原性高次多胎妊娠がヘルスケアシステムに対してもたらす経済的なリスクについて
      2. 男性不妊

        microTESE時の精細管拡張と精子回収率について
      3. 食生活

        IVFにおいて、全粒穀物の摂取量と生児出産率に相関があることを示した論文
      4. ART

        なぜ、正倍数性の胚盤胞を移植しても継続妊娠に至らないのか考察した論文①
      5. 妊娠の科学

        男性の加齢が雄性の胚細胞にどのような影響を及ぼすか?
      PAGE TOP