不妊リスク

ガン罹患後の不妊リスクについて

一定の非婦人科の癌に罹患した思春期/若年女性の生存者はその後に不妊と診断されるリスクは上昇する。このリスクは分娩の既往の有無によって影響を受けるという結果が得られた。 癌治療は向上してきており生存率の劇的な上昇をもたらしている。

生存率の上昇につれ生存者におけるQOLを最適化することの重要性が強調されるようになった。多くの癌治療は不妊のリスクを上昇させる。

今まで非婦人科癌の思春期/若年女性における不妊のリスクを比較した研究は行われていない。また、疫学調査も癌治療後の生児出産率の比較や卵巣予備能のマーカーなどを指標とした研究にとどまっ ている。

そこで、非婦人科癌の思春期/若年女性の生存者において癌を有しない思春期/若年女性よりもその後に不妊と診断されるリスクは上昇するか否か検討した。カナダのオンタリオ州のヘルスケアのデータベースを用いて集団ベースのコホート研究を行った。


脳、乳腺、血液、頭部/頚部、甲状腺、メラノーマ、結腸直腸、泌尿器科の癌と1992~ 2011年に診断された15~ 39歳のすべての女性で少なくとも5年間の無再発例を対象に調査を行った。被曝者は15,107名であった。それぞれの癌の生存者は年齢、地域、既往分娩回数などを一致させ1名当たり5名の癌を有しない女性をコントロールとし2016年12月まで追跡調査を行った。


非被曝群の女性は64,314名であった。癌と診断され1年後に不妊と診断されるものは国際疾病分類9版のコードを用いて調べた。癌と診断される前に不妊、卵管結紮、両側卵巣摘出あるいは子宮摘出を受けている女性は対象から除外した。ログ二項回帰モデルを用いて社会的背景が関わる要因で補正し不妊と診断されるリスクを算出した。

また、癌と診断された時点における既往分娩回数の有無で補正したモデルによる分析も試みた。癌と診断された女性の平均年齢は31.2歳であった。癌生存者における追跡期間の中央値は13.9年であった。

一方、コントロールの女性における追跡期間は14.3年であった。不妊と診断される頻度は癌の生存者においては12.0%とコントロール群9.4%、不妊と診断される平均年齢は癌生存者においては34.5歳、コントロール群 においては34.9歳と統計的有意差が認められた。

思春期/若年女性の生存者群とコントロール群との差異は癌のタイプによって異なり、乳癌の生存者における補正相対リスクは1.38、血液系の癌の生存者における補正相対リスクは1.42、甲状腺癌に対する相対
リスクは1.17といずれも有意差が認められた。しかし、メラノーマに対する補正相対リスクは1.13であったが統計的有意差は認められなかった。

既往分娩の有無で比較したところ乳腺および血液の癌の未産婦の生存者において不妊のリスクの上昇が認められた。しかし、経産婦においては有意な相関は認められなかった。甲状腺癌の生存者においては既往分娩の有無は不妊のリスクに影響は与えなかった。メラノーマの生存者および泌尿器系の癌の生存者において未産婦の女性においてのみ癌と不妊との相関が認められた。

脳、頭部および頚部および大腸の癌の生存者は癌を有しない女性と比較し不妊と診断されるリスクの上昇は認められなかった。

O-018 Infertility diagnosis in female adolescent and young adult survivors of non-gynecological cancers: a populationbased cohort study
M. Velez1, N. Baxter 2, R. Barr 3, E. Greenblatt 4, K. Lajkosz 5, A. Korkidakis 6, H. Richardson 7, C. Booth 8, T. Hanna 8, A.
Robinson 8, M. Green 9.
1Queen’s University, Obstetrics and Gynecology, Kingston, Canada.
2University of Toronto, Dalla Lana School of public Health, Toronto, Canada.
3McMaster University, Department of Pediatrics, Hamilton, Canada.
4Mount Sinai Hospital, Department of Obstetrics and Gynecology, Toronto, Canada.
5Queen’s University, ICES Queen’s, Kingston, Canada.
6Queen’s University, Department of Obstetrics and Gynecology, Kingston, Canada.
7Queen’s University, Department of Public Health Sciences, Kingston, Canada.
8Queen’s University, Department of Oncology, Kingston, Canada.
9Queen’s University, Department of Family Medicine, Kingston, Canada.

関連記事

  1. 不妊リスク

    子宮内膜症の思春期の少女へのサプリメント投与:二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験

    外科的に子宮内膜症と確認された思春期女性および若年女性においてビタミン…

  2. 不妊リスク

    子宮外妊娠における卵管切除術はその後の妊孕性にポジティブな影響はもたらさないという結果が得られた論文…

    ごくわずかな有益性は除外することはできないが、子宮外妊娠における卵管切…

  3. 不妊リスク

    ESHREガイドラインにおけるPOIの診断と治療について④

    POIと診断された女性における泌尿生殖系の問題に対しどのような治療法が…

  4. ART

    IVFに対する子宮筋腫の影響:系統的レビューとメタ分析

    子宮腔に影響を与えない筋層内筋腫が存在している場合、漿膜下筋腫の有無に…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

サイト情報をキャッチ

Push7でプッシュ通知を受け取る:



FeedlyでRSS購読をする:



>> プッシュ通知やRSSについてはこちらをご覧下さい

最近の記事

記事ランキング

アーカイブ

最近チェックした記事

    最近のコメント

      1. 男性不妊

        過体重や肥満男性は、精液量や精液濃度、総精子数において少ない傾向があることを示し…
      2. 不妊リスク

        子宮内膜症の思春期の少女へのサプリメント投与:二重盲検、無作為化、プラセボ対照試…
      3. 不妊リスク

        子宮外妊娠のオッズはたとえ非良好胚であっても2個の胚移植を試みることによって上昇…
      4. 着床障害

        反復着床障害の患者における血中の代謝産物のレベルについて検討した論文
      5. 妊娠の科学

        出生の累積確率を予測するための治療前カウンセリングツール
      PAGE TOP