妊娠の科学

男性の加齢が雄性の胚細胞にどのような影響を及ぼすか?

女性の加齢が生殖機能に影響を与えることはよく知られているが、男性の加齢が雄性の胚細胞にどのような影響を及ぼすかということに対してはあまりよくわかっていない。しかし、加齢に伴って胚細胞におけるDNAメチレーションに影響を及ぼすのではないかと思われる。高齢男性の児にどのようなリスクがあるか検討する必要がある。

西欧諸国においては親の年齢は確実に上昇してきている。女性においては生殖機能に及ぼす年齢の影響はよく知られているが、男性の生殖細胞に対する加齢の影響に関してはあまりよくわかっていない。

その1つは加齢による影響なのか、また、他の共存症などに関わる影響なのかということを区別することが難しい点があげられる。

今回、健康な男性を対象に加齢が胚細胞に分子学的にどのような影響をもたらすかを調査しようと試みた。

18~ 84歳の197名の男性を対象とした。身体的評価、アンドロロジーが関わる評価、精液検査および血液検査などを試みた。DNAは血液、スイムアップ精子から採取しテロメアの長さ、DNAメチレーションなどの分析を行った。また、DNA fragmentation index(DFI)をアクリジンオレンジ染色を用いて調べた。

血液における相対的なテロメアの長さは加齢とともに短縮した。精子におけるテロメアの長さは延長が認められた。DNAメチレーションは血液において加齢に伴う変化を示さなかった。精子DFIは加齢とともに上昇した。

WGBSを試みたところ180以上の年齢が関わるDNAメチレーションが認められそれらの一部は胚発育に重要な領域に存在していた。また、加齢に伴ってDFIとDNAの損傷のレベルの上昇が確認された。

胚細胞に特異的なDNAメチレーションを特定しようと試みたが血液細胞では認められなかったが、胚細胞における加齢の過程に関わるプロセスに関わると思われるDNAメチレーションが認められた。このような現象は精子形成の過程において発現するとは思われず加齢がそれに関わっているのではないかと思われる。雄性の胚細胞のDNAの質に及ぼす加齢の影響を考慮した場合、高齢の父親の児に対するリスクについて考えてみる必要がある。

O-097 The ageing male germ cell

J.Gromoll1, E. Pohl2, K. Redmann2, C. Krallmann2, J. Cremers2, K. Czeloth3, S. Kliesch2, M. Zitzmann2, F. Tüttelmann4, B.

Horsthemke5, S. Laurentino2.

1University Hospital of Münster, Centre of Reproductive Medicine and Andrology Campus 1- D11, Münster/Westf., Germany.

2Centre of Reproductive Medicine and Andrology, University Clinics, Muenster, Germany.

3Department of Growth and Reproduction, University Clinics, Copenhagen, Denmark.

4Institute of Human Genetics, University Clinics, Muenster, Germany.

5Institute of Human Genetics, University Clinics, Essen, Germany.

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