ART

IVFおよびICSIにおける累積生児出産率と採卵数の関係について示した論文

IVF/ICSIにおいて、累積生児出産率は採卵数と比例し上昇するということを示した論文をご紹介します。

Conventional ovarian stimulation and single embryo transfer for IVF/ICSI.
How many oocytes do we need to maximize cumulative live birth rates after utilization of all fresh and frozen embryos?
Panagiotis Drakopoulos, Christophe Blockeel. Dominic Stoop, Michel Camus, Michel de Vos, Herman Tournaye, and Nikolaos P.Polyzos
Hum Reprod.2016 Feb;31(2):370-376

いくつかの研究においてIVF/ICSIのために調節卵巣刺激を行い、どの程度の卵子が得られるのを至適採卵数とするかという問題について報告している。その結果、卵巣の反応性は生児出産率と独立し相関するという結果が得られている。
大部分の研究は新鮮IVF周期の結果のみを対象としているが、新鮮胚および凍結融解胚の成績を合わせて1回の採卵後の累積生児出産率を検討した結果は報告していない。しかし、累積生児出産率は不妊患者にとっては最も重要な結果である。

今回、初回の調節卵巣刺激を受け単一の胚移植を計画した女性において、新鮮胚移植と凍結融解胚移植を試み得られた累積生児出産率に卵巣の反応性がどのような影響を与えるか検討した。2009~2013年にかけて大学の医療センターにおいて大規模な後方視的コホートを対象に分析を行った。初回のIVFの新鮮胚移植周期において1個の単一胚移植を行うことを予定した18~40歳の1,099名の連続した女性を調査の対象とした。すべての患者に150~225単位のrFSHの投与を開始し、fixed GnRH antagonist protocolに基づいて調節卵巣刺激を行った。胚凍結にはvitrification法を用いた。

新鮮胚移植に伴う生児出産率と凍結融解胚移植も含めた累積生児出産率に、採卵数がどのような影響を与えるかを調べるために、患者を4つのカテゴリーに分けて比較した。A群は採卵数が1~3個の低反応群、B群は4~9個の非至適反応群、C群は10~15個の至適反応群、D群は15個超の高反応群とした。新鮮IVF/ICSI周期における非補正生児出産率は15個超の群、10~15の群および4~9個の群で統計的差異は認められなかった。

新鮮胚移植における生児出産率は低反応群と比較し非至適反応群、正常反応群、高反応群においては有意に高い値が得られた。中等度から重度の卵巣過剰刺激症候群は1%(11/1,099)に発生した。累積生児出産率は採卵数と比例し上昇した。15個超の高反応群においては低反応群と比較し、また非至適反応群と比較し有意に高い値を示し、正常反応群と比較した場合においても有意に高い値を示した。

亜至適反応群においては低卵巣反応群と比較し良好な結果が得られたが、この群では正常反応群と比較し累積生児出産率は有意に低下した。多変量ロジステック回帰分析を用いたところ、卵巣の反応性のカテゴリーは独立し累積生児出産率の予測因子となるという結果が得られた。

関連記事

  1. ART

    出生の累積確率を予測するための治療前カウンセリングツールについて

    卵巣予備能と年齢を用い生児出産の予測モデルを作成したところ、陽性予測値…

  2. ART

    不妊治療で妊娠に至った単胎妊娠の親において、妊娠期間中から産褥期に渡って不安レベルの上昇が認められた…

    不妊治療で妊娠に至った単胎妊娠の親において、周産期に不安のレベルの上昇…

  3. ART

    卵巣刺激下のIUIによって継続妊娠率の向上が見られたことを示した論文

    原因不明不妊カップルにおいて、卵巣刺激下のIUIを施行することによって…

  4. ART

    IVF患者の最適な刺激プロトコルを選択するための人工知能ベースのアルゴリズムの開発と検証

    AIを利用した予測モデルを作成したところ初回のIVFを受けた患者におい…

  5. ART

    全胚凍結戦略がARTにもたらすもの〜その可能性について

    最初のメタアナリシスで凍結融解胚移植によって、着床率、妊娠率および継続…

  6. ART

    IVFまたはICSIを受けた卵管留水腫を有する女性における妊娠継続率について、子宮鏡下卵管閉鎖術と腹…

    IVF/ICSIを受けた卵管留水腫を有する女性において、子宮鏡下卵管閉…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

サイト情報をキャッチ

Push7でプッシュ通知を受け取る:



FeedlyでRSS購読をする:



>> プッシュ通知やRSSについてはこちらをご覧下さい

最近の記事

記事ランキング

アーカイブ

最近チェックした記事

    最近のコメント

      1. 男性不妊

        過体重や肥満男性は、精液量や精液濃度、総精子数において少ない傾向があることを示し…
      2. ART

        同一月経周期に2回刺激採卵する方法が、低反応性の不妊症患者でも有効である可能性を…
      3. ART

        全胚凍結戦略がARTにもたらすもの〜メリットと抱える問題点
      4. ART

        IVFまたはICSIを受けた卵管留水腫を有する女性における妊娠継続率について、子…
      5. 未分類

        多嚢胞性卵巣症候群の受精能のない女性のためのアロマターゼ阻害剤(レトロゾール)-…
      PAGE TOP