年齢の高いマウスから得られた卵子は若いマウスから得られた卵子と比較し精子によって引き起こされたDNAの損傷の修復能が低下しているものと考えられる。
女性の生殖期間は加齢とともに卵の質が低下し短縮する。したがって、高齢女性は若い女性と比較しARTを受けたとしてもその成功率は低下する。加齢と卵子の質は染色体の異数性と関わっている。しかし、卵子の質を決定する因子についてはよくわかっていない。
胚のゲノムの活性化が認められる前のDNAの修復能はDNAの質をコントロールする母体側の転写や蛋白が関わっているものと考えられる。母体や卵子の加齢に伴ってmRNAの貯蔵量が減少し、その結果、DNAの修復の能力が低下し胚発育にもネガティブな影響が及ぶのではないかと考えられている。
そこで、女性の加齢が精子によって引き起こされたDNAの損傷を修復する卵子のDNAの修復能にどのような影響を及ぼすか調査した。マウスを用い精巣上体精子をスイムアップし放射線照射を試みないコントロール群、1GYの照射を試みた群および30GYの照射を試みた群の3つに分けた。その後精子のDNAの損傷の状態と媒精の状態を調べた。得られた接合子をタイムラプスインキュベー
ターで培養した。91個のDNA修復遺伝子の発現の状態を調べた。
それぞれの3つの群における精子DNAの平均の損傷率はコントロール6.1%、1GY群16.1%、30GY群53.1%という結果であった。
しかし、IVF後受精率には3群間で差異は認められずそれぞれ86.79%、82.75%、76.74%という結果が得られた。加齢のマウスを用いた実験においてもコントロール群93.1%、1GY群70.37%、30GY群68.18%という結果であった。
しかし胚盤胞形成率は各群間で有意に異なり若いマウス群においては、コントロール群では86.95%、1GY群では33.33%、30GY群では0.0%という結果であった。
加齢マウスを用いた場合、コントロールでは70.37%、1GY群では0.0%、30GY群では0.0%という結果が得られた。加齢のマウスを用いた群においては若いマウスを用いた群と比較し1GY群における胚盤胞形成率が有意に低下しそれぞれ33.33%、0.0%であった。
遺伝子の発現の状態を分析したところ、高齢マウスにおいてはDNAの修復に関わる遺伝子の相対的発現は低下した。年齢の高いマウスから得られた卵子におけるDNAの修復に関わる遺伝子の発現のレベルの低下はDNAの修復能の低下を示唆するものである。
O-003 Oocyte DNA repair capacity of controlled sperm DNA damage is affected by female age
F. Horta1, S. Catt1, B. Vollenhoven1,2, P. Temple-Smith1.
1Monash University, Obstetrics and Gynaecology, Melbourne, Australia.
2Monash IVF, Reproductive medice, Melbourne, Australia.
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