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第1細胞質分裂後の割球の移動時間が新鮮胚移植後の臨床的妊娠率に影響を与えることについて示した論文

最初の細胞質分裂後の割球運動の持続時間は、minimal stimulation programにおいて新鮮な卵割胚移植後の臨床妊娠の効果的な予測因子である。

新鮮分割期胚移植後の臨床的妊娠率は第1細胞質分離後の割球の移動の時間の延長に伴って有意な低下が認められた。

タイムラプスインキュベーターシステムを用いることによって発育動態と形態に基づいて胚の評価を下すことができる。多くの研究においてヒトの胚の分割のタイミングは着床前の発育とその後の妊娠の結果と相関すると報告されている。

タイムラプスによる胚のモニタリングの際に第1細胞質分離後に割球が移動することが確認された。割球の移動の期間を調べたところ、胚によって差異が認められることも確認された。割球の移動が胚発育や移植後の妊娠の結果にどのような影響を与えるかという点についてはよくわかっていない。

そこで、第1細胞質分裂後の割球の移動の時間が新鮮胚移植後の臨床的妊娠率とどのような相関を示すか検討した。

平均年齢36.4歳の779名の患者から781個の胚をエンブリオスコープを用いて培養し観察した。胚の発育動態と形態に関するデータを後方視的に分析した。第1細胞質分裂後割球の動きを観察しその開始から終了までの時間を記録した。割球の動きの時間と臨床的妊娠率との相関を調べた。割球の動きの終了までの時間をtBMovEとした。

平均dBMovEは6.56時間であった。dBMovEはday2における4細胞期胚までの発育率と相関しそのオッズ比は0.937であった。dBMovEはtPNfとt4の間隔とも相関した。さらに、dBMovEはVeeckの基準に基づいて判定した胚のグレードとも相関し、グレード1では2.90時間、グレード2では5.69時間、グレード3では8.11時間、グレード4では18.08時間でこれらの間に統計的有意差が認められた。

ロジステック回帰分析を用いて調べたところ臨床的妊娠率はdBMovEと相関しそのオッズ比は0.966という結果が得られた。dBMovE別に4群に分けたところ、A群は1.98時間未満、B群は1.98~ 3.64時間、C群は3.64~ 4.59時間、D群は4.59以上という結果が得られた。

Duration of blastomere movement post first cytokinesis is an effective predictor for the clinical pregnancy afterfresh cleaved embryo transfer: in a minimal stimulation program.

K.Ohata1, K. Ezoe1, A. Yabuuchi1, S. Ueno2, K. Uchiyama2, T. Okimura2, T. Kobayashi3, K. Keiichi3.

1Kato ladies clinic, R&D division, Tokyo, Japan.

2Kato ladies clinic, Embryology Laboratory, Tokyo, Japan.

3Kato ladies clinic, Department of Gynecology, Tokyo, Japan.

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