ART

世界におけるARTの実施状態とその結果について調査した論文

世界的にみてARTの実施状況を調べたところ、その利用頻度と有用性は国によって大きな差はあるものの比較的一定しているという結果が得られました。単一胚移植および凍結融解胚移植の割合は上昇してきており、それに伴って多胎分娩の割合はわずかながら低下しました。

International Committee for Monitoring Assisted Reproductive Technologies world report:Assisted Reproductive Technology 2008,2009 and 2010
S.dyer.G.M.Chambers,J.deMouzon,K.G.Nygren,F.Zegers-Hochschild,R.Mansour,O.
Ishihara,M.Banker,and G.D.Adamson
Hum Reprod.2016 Jul;31(7):1588-1609

ARTは世界各地で広く行われている。ARTの利用状況のモニタリング、利用率、アクセスの状態、有用性、安全性などは重要な因子である。

今回、2008年、2009年および2010年における世界のARTの実施状態とその結果について調査した。毎年2,500のARTクリニックからデータの抽出を求めた。対象とした国は58~61か国であった。国際ARTモニタリング委員会の開発した方法によってデータを分析し、結果を国別、地域別および全体を含めたデータとして提示した。

2008,2009および2010年において4,461,309周期超のARTが開始され、その結果、1,114,858名の児が誕生したと推定された。2008~2010年において採卵数は4.6%上昇し、凍結融解胚移植周期は27.6%の上昇をみた。

世界的にみて、ARTの利用状況は比較的安定しており、2008年には人口100万人当たり436周期、2010年には人口100万人当たり474周期であった。しかし、この値は国によって大きな差異が認められ、100万人当たり8周期から4,775周期にわたっていた。

自己の卵子を用いた治療周期においてICSIが行われる割合はほぼ安定しており66%前後であった。IVF/ICSIによる新鮮胚移植による採卵当たりの分娩率は2008年には19.8%、2009年には19.7%、2010年には20.0%という結果が得られた。

凍結融解胚による分娩率はそれぞれ18.8%、19.7%、20.7%という結果であった。自己の卵子を用いた新鮮治療周期において単一胚移植は2008年には25.7%、2010年には30.0%と上昇が認められた。

移植胚数は地域によりばらつきがあるが、平均2.1個から1.9個へと減少した。自己の新鮮胚移植による双胎分娩率は2008年には21.8%、2009年には20.5%、2010年には20.4%、3胎分娩率はそれぞれ1.3%、1.0%、1.1%という結果であった。

新鮮IVF/ICSIにおいて周産期死亡率は分娩1,000当たり2008年には22.8、2009年には19.2、2010年には21.0という結果で、凍結融解胚移植においてはそれぞれ15.1、12.8および14.6という結果であった。自己の卵子を用いたARTを試みた40歳以上の女性の割合は2008年には20.8%であったが、2010年には23.2%へと上昇が認められた。

関連記事

  1. ART

    予測モデルによって、TESEによる精子回収の可能性を高い精度で識別できることを示した論文

    TESEによって精子回収の可能性が高い患者と低い患者を、6つの変数を…

  2. ART

    IVFで妊娠に至った子宮内膜症を有する女性において、流産のリスクは上昇しないということを示した論文

    IVFで妊娠に至った子宮内膜症を有する女性において流産のリスクは上昇し…

  3. ART

    Day5対Day6の新鮮および凍結胚盤胞移植サイクルの結果:系統的レビューとメタ分析

    day5胚盤胞移植を試みることによってday6胚盤胞移植よりも新鮮胚…

  4. ART

    出生の累積確率を予測するための治療前カウンセリングツールについて

    卵巣予備能と年齢を用い生児出産の予測モデルを作成したところ、陽性予測値…

  5. ART

    なぜ、正倍数性の胚盤胞を移植しても継続妊娠に至らないのか考察した論文①

    卵子や胚を取り巻く環境には、加齢やライフスタイル、心理的ストレス、栄養…

  6. ART

    IVFに対する子宮筋腫の影響:系統的レビューとメタ分析

    子宮腔に影響を与えない筋層内筋腫が存在している場合、漿膜下筋腫の有無に…

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

サイト情報をキャッチ

Push7でプッシュ通知を受け取る:



FeedlyでRSS購読をする:



>> プッシュ通知やRSSについてはこちらをご覧下さい

最近の記事

記事ランキング

アーカイブ

最近チェックした記事

    最近のコメント

      1. 食生活

        原因不明不妊女性に対する抗酸化剤であるビタミンC、ビタミンE、βカロチン投与につ…
      2. 代理出産

        フィンランドで2007年に代理出産を禁止する法律が制定されたことによる影響につい…
      3. ART

        形態による胚選択を伴う非ドナー卵体外受精の使用は、40〜43歳の患者にとって効率…
      4. 未分類

        IVFを受けた正常月経周期を有する女性の血中DHEAS上昇と流産の関係について
      5. 妊娠の科学

        男性の加齢が雄性の胚細胞にどのような影響を及ぼすか?
      PAGE TOP